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2007.12.11

歯の再生医療

先日 ある患者様から エムドゲイン について尋ねられました。随分と勉強されているのだな と感心しました。エムドゲインの詳しい作用機序はここでは省略します(興味のある方はこちらまで)が、簡単に言えば歯のセメント質を再生する歯科領域の第一世代の再生医療です。

このところ再生医療に関してはビッグニュースが幾つかありましたね。

山中教授の京大グループは36歳女性の顔の皮膚を用い胚性幹細胞(ES細胞)と同等の全能性を持つ「万能細胞」を作り出す事に成功しました。

名古屋大の上田教授ら研究グループは6日、乳歯の歯髄(歯の真ん中の神経や血管のあるところ)から骨や神経など様々な細胞に分化する能力を持つ 幹細胞 を取り出し、再生医療に役立てる研究をするため、世界で初めて 学内に「乳歯幹細胞研究バンク」を設立したと発表しました。

幹細胞を使った再生医療では、骨髄や臍帯血(さいたいけつ)がありますが、乳歯の幹細胞はこれらに比べて、細胞の増殖能力が高く、採取が簡単なことから実用化に期待が集まりそうです。

また抜歯した親知らずの歯胚から取り出した間葉系幹細胞からも 動物実験によって骨組織と肝臓の再生に成功しています。通常歯が完成してしまえば歯胚は消えてしまいますが、親知らずは成人になる頃生えてくる歯なので特に若いうちであれば顎の中に埋っている歯胚をそのまま採取できるのです。

上田教授は「これまで捨てられていた歯が有効活用できるうえ、受精卵からつくられる胚(はい)性幹細胞(ES細胞)に比べ、倫理的な問題も少ない。将来的には、孫の乳歯で祖父母の骨粗しょう症による骨折や傷跡などを治療できる可能性がある」と話しています。

そうです、クローン技術 や 受精卵からつくられる胚性幹細胞(ES細胞)は、受精卵を使うという点で、大さな倫理的法的な問題点となっていました。

大人の体に残っている成体幹細胞を利用する場合は ティッシュ・エンジニアリングと区別され、歯科においても やがて再生した自分の歯を移植治療する日がくるかもしれませんね。